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Blog©KOBE CTY DENTAL CLINIC
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東灘区 神戸シティデンタルクリニック
今回は、口腔ケアとウィルス感染についてお話し致します。
①口腔ケアとインフレンザウィルス感染の研究
口腔ケアとウィルス感染の関係ついての研究は以前より行われてきました。
その研究の歴史は古く、100年前のスペインインフレンザ(H1N1)流行時まで遡ります。
Weston PRICE(1870-1948 年)の研究によると、口腔ケアが不十分な場合インフレンザウィルスの感染リスク及び重篤化のリスクが高くなる傾向があったとされています。
また、東京歯科大学 奥田克爾名誉教授が2003年に発表された口腔ケアとインフレンザ予防の関係についての論文では、デイケアの要介護高齢者に口腔ケアを行った結果、インフルエンザ発症を減少させることも分かっています。これは、口腔内の細菌、特に歯周病原因菌が産生する『プロテアーゼ』と呼ばれる酵素が関係していると言われています。
この酵素は、人の気道粘膜の膜を破壊します。この膜はウィルスが細胞に侵入してこないよう保護膜の働きをしますが、破壊されると口腔内に入ってきたウィルスが起動粘膜にくっつきやすくなり細胞に侵入し、感染を引き起こしやすくなると考えられております。つまり、口腔内が清掃不良となり歯周病原因菌が増えるほどウィルス感染のリスクも高くなりやすいと考えられます。
②新型コロナウィルスの感染経路としての『ACE2』
新型コロナウィルスの感染経路としてアンジオテンシン変換酵素 2『ACE2』という受容体が深く関与していると報告されています。新型コロナウィルスはこの『ACE2』にくっつく事によって細胞内に侵入すると考えられています。普段、この『ACE2』は人の血圧調整や心臓の保護などに関与していますが、新型コロナでは感染の入り口になると明らかになっています。
『ACE2』は肺、腸管、心臓、腎臓、様々な部位に存在しますが、口腔内にも多く存在し、特に舌の上には多くあると言われています。
主にPCRにて検体と採取されるのは鼻腔粘膜からでしたが、最近は口腔内の唾液も検体として採取されるようになってきています。これはCOVID-19患者の唾液の中には90%以上の割合で、ウィルスが検出されることが明らかになっているからです。
また『ACE2』が多い舌にCOVID-19することにより味覚を感じる味蕾細胞が破壊され味覚異常が発現するとも考えられています。
③新型コロナウィルスと歯周病原因菌
日本大学歯学部の研究によると、歯周病原因菌が気管上皮細胞における上記の『ACE2』の発現を促しまた、炎症性サイトカインの上昇(症状が重くなる物質)に関与していると報告しています。
これは特に誤嚥性肺炎に深く関与しているとされています。誤嚥性肺炎とは細菌が唾液や食べ物などと一緒に誤飲され、気管支や肺に入ることで発症する呼吸器疾患です。
以前よりインフルエンザの感染予防と重症化に口腔内最近が関与していることは指摘されてきました。
新型コロナウィルスに関しても全てが明らかになったわけではありませんが、やはり口腔内細菌との関係性が徐々に明らかになってきており感染と重症化に関与していると言われています。
新型コロナウィルス感染防止のセルフケアとして手洗いうがいが推奨されていますが、実はうがいだけでは口腔内細菌を除去することはできません。
口腔内細菌、特に歯周病原因菌は歯石やプラーク中の深くに存在しています。これを除去するには、専門的なクリーニングも必要ですが、特にご自宅でのブラッシングが重要です。また、舌ブラシで舌を掃除することも必要だと考えられます。